ボトルを開けると、そこには濃い緑色の粒がぎっしり。1日の目安は、なんと30粒。控えめに言って、多い。
スピルリナ。スーパーフードとして名前は有名で、NASAが宇宙食として研究したという逸話までついてまわる。でも「結局これって何なの?」と聞かれると、答えに詰まる——そんな存在ではないでしょうか。
この記事では、薬剤師の立場からスピルリナを解説します。何者なのか、何が入っているのか。成分表から何が補えて、何は期待しすぎないほうがいいのか。そして飲むのを控えたほうがいい人についても、きちんとお伝えします。選ぶ前の参考にしてください。
※本記事は栄養機能食品として表示が認められた範囲で製品を紹介するものです。本品は疾病の診断・治療・予防を目的としたものではありません。
スピルリナとは何者か——「藻」です
まず正体から。スピルリナは、アフリカや中南米のアルカリ度の高い塩水湖などに自生する藍藻(らんそう)の一種です。「マイクロアルジェ(微細藻類)」と呼ばれる、ごく小さな藻。クロロフィル(葉緑素)を持ち、光合成を行います。
名前の由来はラテン語の「spirula(小さなコイル)」。その名のとおり、顕微鏡でのぞくとクルクルとらせんを巻いた姿をしています。地球に登場したのは約30億年前。恐竜どころか、地球に酸素をもたらした側の大先輩です。

栄養面でまず驚くのがタンパク質の多さ。乾燥重量の約65%がタンパク質です。ほぼ身が詰まったタンパク質のかたまり、と言ってもいいくらい。さらにビタミンB群、鉄、必須アミノ酸、各種ミネラルを高濃度で含みます。細胞壁が薄く消化吸収されやすいのも、食品として注目される理由です。
💡 つまり——スピルリナはアルカリ性の湖に自生する藍藻(微細藻類)の一種。乾燥重量の約65%がタンパク質という濃密な栄養組成を持ち、ビタミンB群・鉄・必須アミノ酸・ミネラルを含みます。
この製品は「栄養機能食品」——3分類の3つ目
今回取り上げるジャパンアルジェの「海洋深層水スピルリナブレンド」は、栄養機能食品に分類されます。ここを理解しておくと、この製品が何を言えて何を言えないのかがはっきりします。
健康への機能を表示できる食品は、法律上「保健機能食品」と呼ばれる3種類だけです。
- 特定保健用食品(トクホ)——国が製品ごとに審査し、消費者庁長官が許可
- 機能性表示食品——事業者が科学的根拠を消費者庁に届け出る(国の個別審査はなし)
- 栄養機能食品——すでに科学的根拠が確立した栄養成分を、国が定めた基準量含んでいれば表示できる

スピルリナブレンドは3つ目の栄養機能食品です。この制度の特徴は、対象がビタミン・ミネラルなどすでに科学的根拠が確立した栄養成分に限られている点。そのため個別の届出や審査を経ずに、国が定めた基準量を満たしていれば、決められた定型文を表示できます。
この製品が表示している栄養成分は、鉄とビタミンB12の2つ。表示できる文言も国が決めており、次のとおりです。
■ 栄養機能表示
・鉄は、赤血球を作るのに必要な栄養素です。
・ビタミンB12は、赤血球の形成を助ける栄養素です。
この2文が、この製品が公に語れる機能です。少し物足りなく感じるかもしれませんが、見方を変えると、栄養機能食品の表示は「この成分が、この働きに必要である」という、すでに科学的に確立した事実だけを述べたものです。
だからこそ、この2文はそのまま信頼して読めます。健康食品の棚にはさまざまな言葉が並びますが、表示欄に書かれていることこそが、確かめられた事実。ここを知っておくと、商品選びの目線が変わります。

💡 つまり——この製品は栄養機能食品。国が定めた成分と基準量を満たせば、決まった定型文を表示できる制度です。表示できるのは「鉄=赤血球を作るのに必要」「ビタミンB12=赤血球の形成を助ける」の2つ。逆に言えば、この2文は確かめられた事実として読めます。
なぜ「鉄」と「ビタミンB12」なのか——赤血球の話
表示された2つの栄養素は、どちらも赤血球に関わっています。体の中で何が起きているのか、見ておきましょう。
鉄:ヘモグロビンの中心にある金属
赤血球の中身は、ほとんどがヘモグロビンというタンパク質です。このヘモグロビンの中心には鉄が組み込まれていて、その鉄が酸素と結びつくことで、全身へ酸素を運んでいます。
鉄が足りなければ、ヘモグロビンが十分に作れません。酸素を載せる受け皿そのものが足りない状態です。だから「鉄は、赤血球を作るのに必要な栄養素」と表示できるわけです。

ただし、植物の鉄は吸収されにくい
ここからが、薬剤師としてお伝えしたい実践的な話です。
食品中の鉄には2種類あります。肉や魚に含まれるヘム鉄と、野菜・海藻・大豆などに含まれる非ヘム鉄。ヘム鉄はタンパク質に包まれた形のまま吸収されるため効率がよく、一方の非ヘム鉄は、そのままでは吸収されにくい性質があります。スピルリナの鉄は、この非ヘム鉄です。
食事全体でみた鉄の吸収率は、およそ15%程度と見積もられています。つまり、口に入れた鉄のうち体に取り込まれるのは一部だけ。「含まれている量」と「吸収される量」は別物だということを、まず押さえてください。

だからこそ、非ヘム鉄は飲み合わせで差がつきます。厚生労働省の食事摂取基準では、鉄の吸収について次のように整理されています。
- 吸収を促進するもの……たんぱく質、アミノ酸、アスコルビン酸(ビタミンC)
- 吸収を抑制するもの……フィチン酸、タンニン、シュウ酸
実践に落とすと、こうなります。飲むなら、ビタミンCを含むもの(柑橘類の果汁など)と一緒に。逆に、タンニンを含むコーヒーや濃い緑茶・紅茶と同時に流し込むのは避ける。水かぬるま湯で飲むのが基本、というのは、こういう理由からも理にかなっています。
ちなみに、促進因子に「たんぱく質」が挙がっているのは、スピルリナにとって好都合です。この藻は乾燥重量の約65%がタンパク質でした。鉄と、その吸収を助けるたんぱく質が、同じ粒の中に同居していることになります。
なお、鉄の1日の推奨量は成人男性でおよそ7.0〜7.5mg、月経のある女性で10mg前後とされています。この製品の1日分に含まれる鉄は3.7〜6.9mg。食事の土台があったうえで、そこに上乗せする——そういう位置づけの量です。

ビタミンB12:赤血球の「設計図係」
もう一方のB12は、まったく別の角度から赤血球に関わります。
赤血球のもとになる細胞は、骨髄で猛烈な勢いで分裂を繰り返しています。細胞分裂にはDNAの複製が必要で、B12は葉酸と協力してDNA合成を支える働きをしています。足りないと分裂がうまく進まず、通常より大きく未熟な赤血球ができてしまう。だから「赤血球の形成を助ける栄養素」と表示されるわけです。

そしてB12には、大きな特徴があります。これを作れるのは一部の細菌だけで、植物は作りも利用もしません。そのため肉・魚介・卵・乳製品といった動物性食品に偏って存在しており、動物性食品をとらないベジタリアン・ヴィーガンの方は不足しやすい栄養素です。
ひとつ知っておきたいのは、藻類に含まれるB12には「シュードB12」と呼ばれる、ヒトが利用しにくいとされる形があるということ。
スピルリナのようなラン藻のB12はこれにあたると報告されています。表示は公定の測定法に基づくものなので制度上の問題はありませんが、B12の補給そのものが目的なら、動物性食品やB12のサプリメントなど、別の手段のほうが確実です。
💡 つまり——鉄はヘモグロビンの中心で酸素と結びつく成分。ただしスピルリナの鉄は吸収されにくい非ヘム鉄なので、ビタミンCと一緒に、コーヒーや濃いお茶は避けてが実践のコツ。B12は葉酸と協力して赤血球の細胞分裂を支える成分。ただしB12の補給が目的なら、別の手段のほうが確実です。
ところが、この話には続きがあります。
では、スピルリナの本当の価値はどこにあるのか
ここまで表示された2成分を見てきましたが、スピルリナの魅力はそこだけではありません。むしろ表示欄に載っていない成分にこそ、見るべきものがあるというのが実際のところです。成分表を見てみましょう。
■ 1日摂取目安量30粒(6g)あたりの主な成分
たんぱく質 3.1〜4.8g/鉄 3.7〜6.9mg/βカロテン 4800〜12000μg/フィコシアニン 180〜540mg/γ-リノレン酸 54〜110mg/クロロフィル 50〜100mg/ゼアキサンチン 12〜27mg/カルシウム・カリウム・マグネシウム・亜鉛などのミネラル/ビタミンB1・B2・B6・E・K・葉酸・ビオチンなど
先ほど見た鉄は、栄養素等表示基準値の49〜92%にあたります。日本人、特に女性で不足しやすい代表的な栄養素なので、ここはしっかりした量です。
そしてβカロテン。4800〜12000μgという数字は、「今週、緑黄色野菜っていつ食べたっけ」という食生活には心強い。フィコシアニンはスピルリナ特有の青色色素です。緑色の藻なのに、中には青い色素が入っている。ちょっと面白いところです。γ-リノレン酸も、ふだんの食事ではなかなか摂れない脂肪酸です。
要するに、スピルリナの本質は「特定の一成分を狙うサプリ」ではなく、「多種多様な栄養素をまとめて補う食品」だということ。一点突破ではなく、面で補う。そう捉えるのが、この藻との正しい付き合い方です。

なお本製品は、沖縄県久米島の水深612mから汲み上げた海洋深層水をブレンドしているのが特徴です。
💡 つまり——スピルリナの価値は、鉄(基準値の49〜92%)、βカロテン、フィコシアニン、γ-リノレン酸、多様なミネラルとビタミンを「面で補える」点にあります。一成分を狙うサプリではなく、栄養の底上げをする食品と捉えてください。
【重要】飲んではいけない人・注意が必要な人
ここは、この記事でいちばん大切なパートです。食品であっても、体質や服用中の薬によっては相性があります。該当する方は、摂取を控えるか、必ず医師・薬剤師に相談してください。
1. ワルファリンを服用している方【最重要】
血栓を防ぐ抗凝固薬ワルファリン(ワーファリン)を服用中の方は、スピルリナを摂取しないでください。
理由はビタミンKです。この製品には、1日分あたりビタミンK1が62〜116μg、K2が1〜8μg含まれています。ワルファリンはビタミンKの働きを抑えることで血液を固まりにくくする薬なので、ビタミンKを摂ると薬の効果が弱まってしまうのです。効果が弱まるということは、血栓を防げなくなるということ。これは重大なリスクです。
納豆・青汁・クロレラを控えるよう食事指導を受けている方は、同じ理由でスピルリナも対象です。「納豆は控えるよう言われたけれど、藻なら大丈夫だろう」と考えてしまいがちなので、特に注意してください。

2. フェニルケトン尿症の方
スピルリナはタンパク質が非常に多く、アミノ酸のフェニルアラニンを含みます。フェニルケトン尿症の方は、これを代謝できないため摂取を避けてください。症状を悪化させるおそれがあります。

3. 尋常性天疱瘡の既往がある方
症状を悪化させるおそれがあると指摘されており、既往歴のある方は使用を避けるべきとされています。
4. 自己免疫疾患のある方
関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、多発性硬化症などの自己免疫疾患をお持ちの方は注意が必要です。スピルリナが免疫を刺激することで、症状に影響する可能性が指摘されています。免疫抑制剤を服用中の方も同様に、必ず主治医にご相談ください。
5. 尿酸値が高い方・痛風の方
スピルリナは核酸を多く含むため、プリン体も比較的多い食品です。1日30粒あたりの総プリン体量はおよそ65mgとされます。ビール酵母やクロレラよりは少ないものの、尿酸値が気になる方は摂取量を控えめにするか、医師にご相談ください。

6. 透析中の方・重篤な疾患で治療中の方
ミネラルを多く含む食品であるため、腎機能に制限がある方は特に注意が必要です。必ず担当医にご相談ください。
そのほか
- 体質により、まれに皮膚のかゆみ、胃の不快感、下痢、便秘などが出ることがあります。その場合は摂取を中止してください
- 魚介類や海藻にアレルギーのある方は注意してください
- 乳幼児・子どもは感受性が高いため、摂取は控えてください
- 妊娠中・授乳中の方は、事前に医師にご相談ください
- 藍藻類は、産地や製造管理によってミクロシスチン(藍藻毒)、細菌、重金属などを含む可能性が指摘されています。信頼できるメーカーの製品を選んでください
💡 つまり——ワルファリン服用中の方は絶対に避けてください(ビタミンKが薬の効果を弱めます)。フェニルケトン尿症、尋常性天疱瘡の既往、自己免疫疾患、高尿酸血症・痛風、透析中の方も、事前に医師・薬剤師へ相談を。
飲み方
1日30粒が目安です。粒数が多く感じられますが、1粒あたりが小さいため、数回に分けて水またはぬるま湯とともに摂取します。前述のとおり、鉄の吸収を考えるならコーヒーや濃いお茶で流し込まないのが無難です。
栄養機能食品は、多量に摂取したからといって効果が高まるものではありません。1日摂取目安量を必ず守ってください。また、開封後はキャップをしっかり閉め、高温多湿と直射日光を避けて保管します。
そして大前提として、食生活は主食・主菜・副菜を基本に、バランスを整えることが基本です。スピルリナはあくまで、その土台を補うものです。
よくある質問(Q&A)
Q. 結局、買う価値はありますか?
A. 目的次第です。「野菜不足を補いたい」「鉄やβカロテンを含む多様な栄養をまとめて摂りたい」という目的であれば、選択肢として十分に価値があります。一方、特定の栄養素を一点集中で補いたいなら、その成分に特化したサプリのほうが確実です。
Q. クロレラとは何が違うのですか?
A. どちらも藻ですが、種類が異なります。スピルリナは原核生物の藍藻、クロレラは真核生物の緑藻です。成分の組成も異なり、クロレラは細胞壁が硬いため、砕いて吸収しやすく加工した製品が主流です。
Q. 貧血に効きますか?
A. 栄養機能食品は、病気を治すためのものではありません。表示できるのは「鉄は赤血球を作るのに必要な栄養素」までです。貧血を指摘されている方は、まず医療機関を受診してください。貧血には鉄欠乏以外の原因もあり、原因を確かめないまま鉄を摂り続けるのは適切ではありません。
Q. 飲み始めて便が緑色になりました
A. スピルリナに含まれるクロロフィル(葉緑素)による色です。心配はいりませんが、気になる症状が伴う場合は摂取を中止してください。
Q. どのくらい続ければいいですか?
A. 栄養を補う食品なので、即効性を期待するものではありません。食生活の一部として、無理のない範囲で続けるものと考えてください。
まとめ
- スピルリナはアルカリ性の湖に自生する藍藻(微細藻類)。乾燥重量の約65%がタンパク質
- この製品は栄養機能食品(鉄・ビタミンB12)。科学的根拠が確立した成分について、国の基準量を満たせば定型文を表示できる制度
- 鉄はヘモグロビンの中心成分。ただしスピルリナの鉄は吸収されにくい非ヘム鉄で、ビタミンCが吸収を助け、タンニン(コーヒー・濃いお茶)は妨げる
- B12は葉酸と協力して赤血球の細胞分裂を支える成分。ただしB12の補給が目的なら、別の手段のほうが確実
- 本当の価値は、鉄・βカロテン・フィコシアニン・γ-リノレン酸などを「面で補える」点にある
- ワルファリン服用中は絶対に避ける(ビタミンKが薬の効果を弱める)。フェニルケトン尿症、尋常性天疱瘡、自己免疫疾患、痛風、透析中も要注意
「スーパーフード」という言葉には、なんでも解決してくれそうな響きがあります。でも実際は、得意なことも、そうでもないこともある。30億年生きてきた大先輩にも、できないことはあるわけです。
何が本当で、何がそうでないか。それを知ったうえで選ぶほうが、ずっと健やかな付き合い方だと思います。正しく理解すれば、スピルリナは頼れる一粒です。
※本記事は栄養機能食品として表示が認められた範囲で製品を紹介したものです。本品は疾病の診断・治療・予防を目的としたものではありません。多量摂取により疾病が治癒したり、より健康が増進するものではありません。1日摂取目安量を守ってください。本品は、特定保健用食品と異なり、消費者庁長官による個別審査を受けたものではありません。服薬中・通院中の方、妊娠中・授乳中の方は、必ず医師・薬剤師にご相談ください。

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